コロナ禍の中で防災士になった皆さんへ(ある日の地域連携・支援活動)

富里市社協の「防災入門講座」支援

コロナ禍3年余りの間、様々な社会活動は対人・対面での行動を制限されました。この間、防災士になった皆さんは実践経験を積む機会が限られ、「防災士にはなったけれど」という思いの方も少なくないと見られます。

 2024年度は、こうした制限が緩和され、通年で迎えた初めての年度です。日本防災士会千葉県支部は以前から、千葉県や県内市町村、社会福祉協議会などと連携し、県内全域で自助、共助の様々な取り組みを支援しており、県支部ホームページ(HP)ではこうした活動を折りに触れ取り上げています。

 新人防災士の皆さんに改めてご案内し、「防災士にはなったけれど」のその先へ、一歩踏み出してみる参考にしてください。

【おことわり】 千葉県支部は、会員をはじめ参加者の皆さんの個人情報やプライバシーを大切にしています。HPなどに掲載する際は、写真、動画撮影を含む取材全般について、ご理解を得て、同意の有無を確かめます。多数の参加者の中に「私は差し支える」という方がいる場合、個人を特定しにくいアングルにするなどの配慮をします。

防災士の社会活動は、どのようなシーンも人と人との関係性の上に成り立っています。HPでは匿名や「以下何人」のような単純な表記で掲載する場合もありますが、県支部の非営利・公益活動に自発意思で参加してくださった方々をリスペクトし、アイデンティティを尊重するためにも、本人のご同意を得たうえで「個人」を表すことには意味があると考えています。

これらを踏まえ、今回の富里市社協支援報告は、参加者の同意を得た上で氏名や写真を載せています。HPの複写、引用や転載は著作権法に基づき、原則禁止です。必要な場合は事務局へお問い合わせください。

 会員防災士がサポートした富里市社協主催「防災入門講座」

富里市社会福祉協議会が主催した「防災入門講座」が2024年2月29日、富里市七栄の市福祉センターで開かれました。千葉県支部は同社協の依頼を受け、講演と実技講習で市民の皆さんの自助、共助の取り組みをサポートしました。

防災士の参加者は、倒壊家屋などからの救援ノウハウ実技を担当したNPO日本防災士会参与で同会技術支援チーム代表・川崎隆克(たかよし)防災士(栄町在住、以下同じ)、講演を受け持った千葉県支部所属・北見隼人防災士(柏市)をはじめ、補助役の小菅三恵子(市川市)、櫻井瑠聖(りゅうせい)(銚子市)、常盤ミサ子(松戸市)各防災士の皆さん5人と県支部事務局スタッフ。防災士としての経験年数は、1年未満からベテランまで様々。指導者役を中心に力を合わせ、取り組みます。

受講者は、同社協のボランティア活動に登録している市民18人。平日の開催なので、主にシニア層の女性16人、男性2人でした。

 防災講演「能登半島地震が問いかける課題」

講座は午後1時30分に開会。まず前半、北見防災士が防災講演「令和6年能登半島地震が私たちに問いかける課題とは」を受け持ちました。

北見防災士は南房総市出身。流山市の江戸川大学メディアコミュニケーション学部2年生(当時)で、「防災気象と災害報道」を専攻し、将来はラジオメディアで災害報道に携わりたいといいます。

講演では自己紹介に続き、被災地・石川県七尾市の能登島で災害ボランティアに参加してきた体験を話しました。主な内容は次の7項目です。

1)地震現象で能登に何が起きたか。

2)北見防災士が現地入りした発災49日目、なお手付かず状態の被災地の写真映像。

3)活断層に起因する地震は、30年スパンの発生確率の計算上、海溝型地震と比べて小さく評価されやすい特性。

4)今回の震源域が国の「主要活断層の評価」対象になっていなかった現状。

5)旧耐震基準の家屋倒壊による圧死者が今回も多かった現実。

6)現地での活動内容と被災地支援のボランティア参加呼びかけ。

7)富里市の災害リスク環境について。

 救助ノウハウ修得「知っていれば、助けられる命がある」

後半は救助作業のスペシャリスト・川崎防災士が受け持った実技講習です。テーマは、発災72時間以内の状況で、倒壊家屋などから下敷きになった人を救い出すノウハウ。避難所運営に至る前、まず自分の命を守り、人を助けるフェーズでの取り組みです。

救命ロープワーク実習

川崎防災士は消防職員の現役時代、東京消防庁の特別救助隊(現消防救助機動部隊ハイパーレスキュー隊)に所属。1974年8月、三菱重工業本社ビル爆破事件(死者8人、負傷者376人)や、1982年2月のホテルニュージャパン火災(焼死者33人)をはじめ、歴史的な重大事件事故に出動しました。

現役を退いた今は、人命救助第一線での多様な経験を踏まえ、住民などによる自助、共助の大切さと作業ノウハウの普及に取り組んでいます。

阪神・淡路大震災(1995年1月17日)では、倒壊家屋の下敷きになった人の多くが近隣住民などの救助活動で助け出されました。川崎防災士は、ノウハウをきちんと体得していれば、救える命を増やす可能性が増すと言います。

この日の講座では、倒壊家屋から要救助者を助け出すバール操法(支点、力点、作用点のとらえ方)や、三角巾の使い方、即席担架の作り方と搬送方法、ロープ(長さ4m)を腰に二重巻きし、垂直避難に役立つロープワーク(写真右)などを全員参加の実習主体に進めました。

バール操法の実技を学ぶシーンで、川崎防災士が受講者に「壊れた家に人がはさまれている。手元にバールが無い時、あなたはどうしますか」

バールの活用方法を伝える川崎防災士(右手前)

と問いかけました。皆さん戸惑っていると、「近くの工事現場から単管(鉄管)を探してきて応用するのです」と例示します。川や池に落ちた人を助けるのに、だれの物でも構わないから、手近にあるロープを投げるのと同じです。 現場経験に裏打ちされた現実味ある説明に、受講者の多くが納得された表情でした。

 千葉県支部では新年度、実践経験を積みたい新人防災士の皆さんに向け、様々なスッキルアップ研修を皆さんに提案する方針です。コロナ禍の期間中に防災士になった人をイメージしていますが、以前からの経験者も基本知識と正確な実技を改めて点検できる機会としてご利用ください。防災士の経験年数が浅くても、だれにも「初めの一歩」はあります。「防災士にはなったけれど」のその先へ、一緒に踏み出してみませんか。