千葉県防災探訪①南房総市白浜町 ~「自分の命は自分で守る」、津波から命を守る自主防災組織の活動~
『千葉県防災探訪』では、千葉県内各地の防災活動事例を紹介いたします。
今回は当会会員である栗原猛さん(南房総市白浜町在住)よりご提供頂いた事例をご紹介いたします。
ここ千葉県南房総市は平成18年3月20日に(2006年)7町村が合併南房総市となりました。白浜町はその1つで房総半島の最南端に位置し、世帯数2828戸、人口約4300人、14行政区で形成されています。
合併に伴い南房総市の窓口である白浜地域センターは職員が4人、臨時職員が4名、男性2名、女性4名です。市では災害時の職員緊急配備体制は出来ていますが、即対応がとれないと思われる状況で当てにはならない。消防団は4分団ありますが、地元に働く場所が少なく若い人は町外で働いている人が多く緊急対応に問題があります。
2011年3月11日の「東日本大震災発生」-南房総市第4支団で町内を消防車で巡回、大津波警報を周知活動のなかで、町民の多くの人が、あまり危機感を感じていなかった、結果的に小さな津波で白浜町では、被害がなかったので良かったのですが、これからマグニチュード8程度の房総沖、東海、東南海地震が30年以内に80%の確率で起きると報道されています。
東日本大震災を教訓にして被災者にならない、被災者を出さないようにと、日頃から準備しようと、町民の皆様全員が被災者にならないためには、行政区ごとの組織だった活動が必要であるとの認識から、各行政区に働きかけるも思うように行かず、まず自分の所属ずる区から自主防災組織を立ち上げ手本にするとの思いから、平成26年下沢区長になり、区の先輩諸氏に自主防災組織の趣旨について説明、ほとんどの方が賛同してくれました。
平成27年3月下沢区通常総会で自主防災組織設立について提案し承認されたので実行に移しました。自主防災組織設立までの経過については長くなるので省略致します。
数回の準備委員会で討議を重ね、平成27年7月5日下沢区防災会の設立総会を開催、「自分の命は自分で守る」を合い言葉に承認され設立いたしました。
下沢区防災会は避難誘導班、情報班、消火班、救出救護班、要援護者支援班、給食給水班、防災委員と組織され、班長は区の役員、副班長2名は、青年会と婦人部から班員7名は有志からで各班10人編成で立ち上がりました。歩ける区民全員がどこかの班へ入るようにと呼びかけており区民全員の防災意識が高まり、周辺行政区への影響も少しずつ出てきて、防災訓練時班別訓練の見学者も見えるようになってきています。最大の課題は津波避難時、災害時避難行動支援者をどう支援するかが大きな課題となっています。
※下沢区は140世帯の区で高齢者率65%です。
下沢区防災会では第1集会所(海抜18m)を地震、津波時の避難所としています。海抜4mから10mの40世帯60名が避難してくる想定です。食料品等は備蓄なし、海抜15m以上の90世帯が食料品等供出、対価については区費の基金勘定で処理するように申し合わせています。火災を起こさなければ、田舎なので各家庭で1週間や10日位の食料品は持っており、例えば我が家では1年分のお米は保冷庫にあります。野菜は畑に行けば何処にも有るので供出していただけます。飲料水については昔からの共同井戸が有り暫く使われていなかったので防災井戸とし、井戸掃除、水質調査を保健所で行い沸かして飲めば良いとのこと。
集会所の背後地に竈を2基用意して有りお釜でご飯焚きをします、薪は裏山に行けばたくさん有ります。
避難訓練でご飯炊きをしていますが70代後半の人達はちゃんと炊けますが、40代~50代は炊けません繰り返し訓練が必要です。便所ですが、畑が周囲に有るのでテントを張り作ります。一応固化品は備蓄品で用意してあります。
集会所周辺に空屋が数軒有り、避難所として活用しようと持ち主と話し合っています。
南房総市の白浜町広域避難所の1つ白浜小学校は下沢区避難所から200mの位置に有ります。
<余談>
南房総市白浜町は東西12km、海岸線から山裾まで500m位の細長い町です。白浜町に入る4路線はすべて山を切り開いた道を通らなければならず土砂崩れにより孤立の恐れがあります。山が海抜100m前後と低く土砂崩れがあっても3日程度で復旧出来ると考えます。
この地は記録によると慶長、元禄地震、関東地震で隆起して出来た地層が岩盤なので揺れが少なく、館山が震度5でも1~2程度の揺れで、過去の地震でも家屋の倒壊の記録が少ない。土砂崩れは山肌を掘ると1mも掘れば岩盤が出てくるので、大量の土砂出ず山裾で止まる。
津波は元禄地震の時8.3mの記録があるが被害の記録がない、白浜町は船首と同じで津波が左右に分断され津波は来ないと変な安全神話を地元住民は持っている。
私の懸念するところは、東日本大震災において各半島で屈折効果現象による津波発生で被害多く出ている事で、これから東海、東南海地震が発生すると言われているので、これまでの地元住民の安全神話を取り除き危機感を持たせる事、機会がある毎に説明ボードを作り津波の屈折効果について説明しています。
《資料》